お仕事とそうではないもの。

社会人5年目の仕事で感じたこととそうではないことのメモ代わり。

懸案事項に立ち向かう笑いが欲しい

係長との飲み会記録になっているこのブログ(笑)

昨日、係長とサシで飲みに行った。半年ぶりのこと。
実は先日、お昼ご飯をご一緒する予定だったのだけど、係長に急遽打ち合わせが入ってしまい、行けなくなってしまった。
当日、連絡すらできる状況でなかったことを、優しい係長は申し訳なく思ったらしい。
「お詫びに飲みに行きましょう」、とご連絡をいただき、そこからすぐに日程調整したわけである。

お詫びのメールをいただいたとき、率直に言うと、私は少し違和感を感じていた。
お詫びなら後日ランチでいいのではないか。そこで奢るので十分なのではないか。いや、係長としてはもともと奢るつもりだったから、それではお詫びにならない、と考えられたのかもしれない。でも、とはいえ、違和感だった。
それは、係長から飲みに誘われるということそれ自体が珍しい、というか初めてのことだったから。

そんな思いを抱えていたら、飲みに行く前日、偶然職場でお会いした。
エレベーター乗り換えの待ち時間でご挨拶と世間話を二言三言。その短い時間で「懸案事項が3件もあるんですけど……どこかお祓いに良い場所はありませんかね……」と弱音を挟み込んできた係長を見て、納得した。
ああ、お詫びというのはもちろんなのだろうけど、もしかしたらその懸案事項を前向きに進めていくパワーみたいなものが欲しいのではないか。だからランチではなく飲みなのではないか。
自惚れかもしれない。でも、自分自身はそうである。係長にお会いしたい、お話したいと思うのは、大抵「聞いてくださいよー!」と泣きつきたいことがあるときだ。他でもない、このご信頼ご尊敬申し上げる上司に話を聞いて欲しい、共感して欲しい、そして何より一緒に笑い飛ばして欲しいと思うからだ。
自惚れかもしれない。でも、係長もその懸案事項を誰かに聞いて欲しいと思われたのではないか。上司部下をやっていた頃、部長や課長に無茶を言われたら笑い飛ばし、うんざりするような仕事に夜な夜な「笑うしかない」と言っていたように。そういう前向きさを懐かしまれたのではないか。
だから、よし、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、今回は私がとことん話を聞いて一緒に笑おう!笑い飛ばそう!いつも係長にはたくさん愚痴を聞いてもらっているから、今回は私が聞き役に徹しよう!そんなことを思いながら飲みに行った。

案の定、係長は飲み会でガッツリとその3件の懸案事項をお話してくださった(笑)部外者の私ですら、ご事情がよく分かった。相変わらず口が軽いというか、この人は嘘がつけないのだ。そして、見た目によらず雑談が大好きだ。
「なんですかそれただのバカじゃないですか!」「本当にヤバイやつじゃないですか!」、正直、今の私にはそんなツッコミくらいしか申し上げられない。でも、「おっしゃるとおり。ヤバいんです」と散々頷かれて次々お話されていたから、共感することくらい、少しはできただろうか。
「仕事は嫌いなはずなんですが……」といつものようにおっしゃる係長に、「仕事の方が係長のことをお好きなんだと思いますよ。モテ期ですね(笑)」と茶化してみた。「勘弁してください(笑)」と笑っていたけれど、でも、あながち間違っていないというか、言い得て妙で、多分本当に仕事の方が寄ってくるんだと思う。仕事からモテ期というのはあくまで比喩だけど、実際、係長が担当だと話がしやすいのだろう。優しいし、まずは話を聞いて受け止めてくれるし、話していてこれでもかというほど思いっきり笑ってくれる。だから、各所属での懸案事項、あるいは懸案事項になりそうな案件が煮詰まる前に係長まで上がってくるのだろう。ご本人からしたら、それで仕事が増えてしまうのだろうけど、つまり、この人は人からモテるのだ。

私は部下をやっているときにそれに気がついた。この係長は多分凄い人だ。
私は係長の3人目部下だった。部下を持って3年目のこと、おそらく初めての女性だった。係長は人に仕事を振ることに慣れておらず、目に見えて気を遣われていた。そして、何よりまだまだ若手の事務担当者のようだった。その中で関係性を作っていったからこそ私は思い入れがあるし、係長としても感じるところがあったんだろうな、というのはこれまでの会話で感じてきた。折に触れて、私は何をしてくれた、ここまでやってくれた、こういうことが助かった、嬉しかった、これは今の部下とも続けている、という話をしてくださるから。私は上司にあわせてフォローすることを考えた年だった。係長は、自分が部下を持ちリーダーシップをとることを考えた年だったと思う。
一方でその頃の私は、おそらく、この人はこの先部下からモテるだろうな、と思った。いずれ、みんなが凄さに気づくだろう。何が凄いってコミュニケーション能力と愛嬌と相手の懐に潜り込む人柄。組織ではこういう人こそ陽の目を見て欲しい。
でも、そうは言っても正直寂しかった。その頃、きっと係長は、かつて右隣で生意気を言っていた3年目の部下を忘れてしまうだろう。そう思ったら、ひどく寂しかった。
この人とのご縁はここで終わらせたくない。大事にしないといけない。この人にはまっすぐぶつかって、きっちり本音で接したいし、あるいは本音で接して欲しい。私が大切な上司だと思ったように、係長に、何か少しでもこの部下で良かったと思ってもらいたい。係長と一緒に一生懸命、前向きに仕事ができて楽しかった。感謝している。また一緒に働きたい。その気持ちを、私は係長に伝えたい。
昔、そんなことを思っていた。そこからもう2年。
一応、右隣の部下の存在は、まだ忘れられてはいないらしい。
私は同期や後輩と話すときに、今の部下のこと、担当としてやり取りしている人のこと、考えると、その人たちを差し置いて係長の話をするのは厚かましいと思っているので、そこは静かにしている。そして係長に対しては、「同期が係長にすごく感謝していましたよ!」とか「係長と話したよ、あの人すごく面白いねってわざわざ連絡きたんですよ!」とか、あるいは「同期が係長のことが好きですって伝えてくださいだそうです(笑)」とか、そういう周囲のポジティブな思いと笑いをできるだけ伝えようと思っている。
だけど、おそらく、そう言っている私がどう考えても一番この係長のことを好きなのだ。周りからよく色々と誤解されるけど、我ながら本当に大好きだなと思って苦笑してしまう。
同期から「良いなー。あの係長の部下やってたなんて羨ましい!ジェラシー感じる(笑)」と言われたけど、多分、私こそ今の部下や、もしかしたらこれから部下になるだろう女性に対してジェラシーを感じてしまうような気がしている。その好意から何か生み出したいわけではないけども、本当に嫉妬深いというか、子供じみた独占欲だなぁと思う。
だからこそ、正直、これだけはガチすぎてとてもご本人には言えたもんじゃない。周りからは、「え、そんな感じでお話しするなんて、係長さんのこと恨んでるの?」って言われているくらいがちょうどいいと思う。
こればかりはさすがの私でもちょっと笑い飛ばせない。

一通り、会計のその瞬間まで騒ぎ回ったあと。最後に無言になるところは、異動が決まった頃から変わらないなと思った。
よっぽど、「じゃあ1時間一本勝負で二次会も行きますか!」と言おうかと思ったけど、やめた。人様の家のお父さんを捕まえて、深夜帯まで飲みに連れまわすなんて良くない。
明日からいつもの日常だ、職場で笑うこともない、前向きに燃えることもない、寂しい。そんなことを思いながら、無言で駅に着いた時、私はちらりと駅の時計を見た。ああ、10時か。課長となら二次会に行く時間だ。係長の終電までは1時間半か。ここから行くのは微妙な時間だな。そんな考えを巡らせていたら、係長も腕時計をちらっと見た。
「いつものあなたにとっては、まだ早いくらいの時間かもしれませんね」
その一言をおっしゃったとき、私はどう読み取ればいいか一瞬悩んだ。そのままの意味でいいのか。単純に私を茶化したいだけなのか、それともまだ時間がありますね、と、そういう意図でおっしゃったのか。
「いやいやそれは係長でしょ!ようやく定時ですもんね。あ、終電まで時間あるじゃないですか!いやーーーしょうがないですね、これはもう一軒近場で行くしかないないですねえ」
なんとなく、それが正解かな、と思った。もうこんな遅い時間なんですね=帰らないと、という意味ではない。そうすると、その一言は、別にそこで言わなくても良い一言だったから。そういうときの係長の言葉には、だいたい言外に本心がある。だから、読み間違えていないような気がした。そこの読み取りには自信がある。
ただ、もし間違っていたら、本当にただ言葉通りの意味なのだとしたら。それを言ったら優しい係長に気を遣わせる。そこまで図々しくなれるほど、酔いは回っていなかった。
「それは係長のことじゃないですか。私はいつも定時帰りですからね!……すみません、今日は夜遅くまで本当にありがとうございました。ご馳走様でした。またやりましょう。失礼いたします」
どんなに失礼なことを言ったとしても、最後は部下としてきっちり頭を下げて、気づかないふりをした。駅に着いていなかったら、ジャブくらい打ったかもしれないけど。

のちほど、ご馳走になったことに対するお礼のメールを送った。返信には、「飲みに行けて懸案事項に立ち向かう勇気をもらいました」と書かれていた。
少なくともこちらは読み間違えていなかったのだと思う。本当に良かった。
元部下はもう話を聞いて笑うことくらいしかできない。懸案事項に一緒に立ち向かうことも、これ笑うしかないですね、って共感して笑うこともできない。
でも、今度お会いするときまでに、懸案事項が少しでも片付いていることは願ってます。