お仕事とそうではないもの。

社会人5年目の仕事で感じたこととそうではないことのメモ代わり。

部下への指示の出し方、叱り方についての一考察

前の係長とサシで飲みに行った。1年ぶりである。
昨年、とある資格試験の一次試験が終わってから、何かとつけてずっと「飲みに行きましょう!」と言っていた気がするが、忘年会、新年会、お花見、お疲れ様会、納会……と結局予定の合わない日々が続き(笑)、あっという間に1年が経ったのであった。
おそらく、この1年で一番お声かけをして、一番振られた人だと思う(笑)

係長と話すのは本当に楽しい。
いつもは、本当に純粋に仕事の話しかしない我々だが、今回は珍しく係長が色んなことを話してくださった。
先輩になった頃のこと。係長になりたての頃のこと。
若い頃にお酒で失敗された話。
ご一緒に仕事をしていたときのこと。
本当に色々なお話をした。もう部下ではないけれど、またひとつ、楽しかった日々のその先が更新できたような気もした。

お鍋から「この野菜は美味しいよねえ」と色々な具を入れようとよそってくださる係長は、本当に「お父さん」という感じだった。
仕事ではほとんど家庭を出さない方だけど(あの係長、ご結婚されているの!?と知り合いから聞かれ、驚かれることもしばしばである)、思わずその姿に、「係長って優しいお父さんでしょうね。係長が怒るところ、想像がつかないですよね」と口にしてしまった。その瞬間、本当に良いお父さんだったから。
係長は「威厳がないんじゃないですか」と苦笑いを返された。怒らないのではなく、怒れない。自分は叱れないのだと。
やたら叱れないということをよくおっしゃるから、会話の流れをそちらに向けてみたら、なんてことはない、その本意は、部下を叱るかどうか悩んでいらっしゃるという話だった。

言おうか言わまいか、とても悩まれていたけれど(そりゃそうだ。私だって部下がどの方か知っているもの)、係長がお話してくださったのは、こんな状況だった。

部下の仕事が、目に余るほどに遅いときがある。
「時間があるときにやっておいて」という資料が一向に上がってこない。
もう少し気遣いできた方が良いのになぁ、この先損をしそうだなぁ、と思うときがある。

今までの部下と比較してはいけないけれど、その遅さが気になっていらっしゃるらしい。
その場で私は矢継ぎ早に質問した。
なぜその部下の方は、やらないんですかね。それとも、やれないんですかね。
時間がないからでしょうか。やり方が分からないからでしょうか。やらなきゃいけないことが多くて、精神的に追い詰められているのでしょうか。苦手意識を感じているのでしょうか。目的や重要性をきちんと分かっていないのではないでしょうか。

別に私自身がその部下に興味があるわけではない。
係長にはなぜ「遅い」という結果になっているのか、意思疎通に齟齬が起きているのかを一段階落として考えてもらった方がいいと思って、その質問をしたのだ。
逆にその部分を読み間違えて、単純に叱る、もしくは注意をすると不幸な結果になると思った。

係長曰く、とても素直な方だということ。
言葉で伝えることを額面通り受け取る性格だということ。

なるほど。私はあっさりと納得した。
それは単純に両者のコミュニケーションの取り方の違いである。

私が係長とコミュニケーションをとっていて思うことは、この方は非常にハイコンテクストな会話をされるということである。
額面通りの意味ももちろん大切ではあるが、その言葉がどういった環境で、タイミングで伝えられたか、その背景にはどんな状況があるのか、というのをきちんと把握していないと、本意を取り違える危険性がある。
私と係長とのコミュニケーションの代表は、「仕事が嫌いです」または「異動したい」だと思う。これを額面通り受け取ったら本当に嫌な上司と部下である。一緒に仕事をしているのに、まるでその状況から逃れたいと思っていると受け取られても仕方がない。
ただ、私たちの場合はそれが共通の話題であり、その共通言語を用いることで信頼関係を深めていったのだ。
どんなにそう言っていても、この上司は誰よりも前向きだと私は知っているし、この部下は休日出勤してでも仕上げてくることを、係長は知っていた。
だからこそ、「仕事が嫌い」というブラックジョークを平気で言える。むしろ、それが冗談としてまかり通るほどには仕事をしている。お互いに、それが冗談だと分かりきっている。
そして何よりも「仕事は嫌い(だけど、この上司もしくはこの部下とこうして仕事の話をするのは案外悪くない)」という続きが暗にあることも分かっているからこそ、不快にはならない。むしろ笑って楽しめるのである。

また、先日のこと。夏休み前の係長からメールをいただいた。
先日送った係長の仕事に関するアンケートについて、答えが遅くなること。そして、別件だけど、明日から夏休みで前の部署と関わりが深い土地に旅行されると、そう書いてあった。もちろん最後には、「仕事関係の場所には行きませんけどね(笑)」と天邪鬼な一文は忘れていなかった。
そのまま受け取ったら、回答が遅くなることの言い訳にしか見えない。だけど私はそれを「仕事関係の場所に行かれることが楽しみで、誰かに言いたくてしょうがない」メールだと読み取った。
それは、送らなくてもいいメールである。一見私への言い訳のように見えて、本当に伝えたいことは旅行の事実である。
だからこそ、その日のうちに「夏休み、楽しんでくださいね」と一言だけ、メールを送った。
さりげなく、いや、割と分かりやすくとお土産も要求した(笑)こんなメールを送ってくださるくらいだから、きっと買ってきてくれるんだろうなと思いつつ。
そのことも直接「あのメールからはワクワクする気持ちしか伝わってきませんでしたよ」とお伝えしたら、「送らなくてもいいメールだもんねえ」と笑っていらっしゃった。うん、そのとおり。
なぜこのタイミングでこのメールを送ったのか、その意味を読み間違えてなかったなと、胸をなでおろした。


つまり、それくらいハイコンテキストなコミュニケーションを要求される。
また、私は係長が気を遣う人だというのも分かっている。私に仕事を振るときに、おそらく無意識だと思うけど、いつも腕をさすっていた。そこには何かしらのストレスがあるのだろうなと感じたものだ。
だからこそ、例えば係長が私に「時間があるときにやっておいて」と言われたら、なるべく早くやって欲しいんだな(むしろそう思うからこそ、「時間があるときに」と私を配慮しながらも、わざわざ「やっておいて」と言ったんだな)と思うし、その日のうちには仕上げる。
つまり、私だったら本意は「やっておいて」の方だと捉える。ただ、必ずしもみんながみんなそうではないだろう。

私がここまで考えるのは、そもそも私も係長とコミュニケーションの取り方が似ているからに他ならない。やたら変に必要ないところで気を遣う。そういう意味では、私の前の部下、私の後輩くんも近いと思う。
また、実際に直属の上司部下で一年を過ごし、やはりコミュニケーションのとり方に悩んだことがあることも大きい。

それを係長が素直な若手に求めるのは酷だし、今の状況で単純に叱ったら不幸な結果しか生まないと思う。

ではどうしたらいいのか。
私が係長の立場にいたら、どのように部下と接するか。
コミュニケーションの方法が近いと思うからこそ、割と真剣に考えた。
ちなみに、このあたりは酔っていたのと、元「部下」という立場もありお伝えはしていない。何かの機会があったら意見交換してみたいところである。

まず、「気遣い」を育成するという考えは持たないようにすると思う。
係長が目指している、というか部下の今後を考えてできた方がいいと思っているのは、「時間があったらやっておいて」の言葉でできることだと思う。つまりハイコンテクストな指示に気がつける、「気が遣える」部下。
ただ、気遣いの仕方は人それぞれなので、この部分を育成するのは非常に難しい。
いや、できないことはない。そうやって叱れば、多分それなりにできるようにはなるけれど、係長の顔色を伺いながら仕事をすることにはなると思う。すると、係長は係長で根が優しい性格なので、絶対に気にしてしまい、余計気を遣うはずだ。なので、係長的意味での「気遣い」という曖昧さについては、副次的に気が付いてもらえたらラッキー、くらいに捉えたい。
相手は若手なのだから、まずは「いつまでに、何を、誰に対して、なぜやって欲しいのか」を明確に指示を出すこと、そしてそれを達成させることが一番大切ではないか。
というか、現実問題として、「時間があるからやっておいて」でやってくれないのなら、それは伝わっていない。もっとコミュニケーションをブレイクダウンさせるしかない。
ただ、言い方はもちろんあると思う。例えばこうだ。
「今、業務に余裕はありますか。この仕事をお願いしてもいいですか。ちなみに、〇〇課長に△△までに上げる資料の基礎データとして使いたいと思っていますが、どれくらいでできそうですか」
で、部下に自分の仕事がどれくらいでできそうなのかを考えさせる。
もちろん、自分で口にした締め切りまでにやっている気配が見られなかったら、催促するのも忘れてはいけない。
誰だって催促なんてしたくない。相手を不快な気分にさせたい人なんていないだろう。
だから、そこは急かすのではなく、相手を思いやるテイで聞くのはどうか。
「あの仕事、どうなっていますか。どこか難しいところはありましたか」
若手のうちは思いもよらないところにハードルがある。経験不足、知識不足、人脈不足。例えば、今の5年目の私からしたら大したことがない仕事でも、2年目3年目には難しかった。
知識がないから時間がかかり、経験がないから勘がなく、人脈がないから誰に相談したら良いのか、また、どう話を通すのが「正解」なのか分からなかった。
そういう、ちょっとした不足が仕事をしていく上では大きな足枷となり、先輩や上司からしたら些細な調整、書類作成であっても随分高いハードルに思え、気が重かった。
だから、上司は気にしてあげて欲しい。
なぜ「遅い」という状況になっているのかを気にして、その原因を探って欲しい。
そこが本人の怠惰によるものなら叱った方がいいと思う。
ただ、例えば係長が忙しすぎて報連相ができないというのならば、共有する時間を作ってあげた方がいい。本人がオーバーフローを起こしているのならば、一回優先順位を一緒に考えてみるのもいいかもしれない。
いずれにせよ、「遅い」という状況そのものを叱ってしまう、これは非常に危険である。「遅い」ことは原因ではなく、結果にすぎないからだ。

まずは、上司として相手に分かりやすく指示を出せているかを振り返ったらいいのではないか。
仕事が遅いことそのものではなく、仕事が遅くなる理由まで、一緒に考えてあげられたらいいのではないか。
生意気な元部下は、そんなことを考えた。

また、気遣いができていない部分について。
これは難しい。私も他人を見ていると気遣いができていないと思うときが多々ある。
言葉を額面通りに受け取る素直な子だと言うのならば、一度こう言ってみてはどうだろう。
「この資料をお持ちですか。お借りしても…あ、そのうちのこれをコピーしてきてもらってもいいですか。本当に申し訳ないですが」
とりあえず頭は下げてみるけど、相手にやらせてみる。これを何度かやっていると、コピーして持っていくもんなんだな、と思うのではないか。毎回「コピーしてきて」って言われるのも面倒だし。
そのあたりは、嫌な気持ちさせることは少なからず飲み込んだ上で、「反復練習」させるしかないのではないか。

私自身が自分の上司との付き合い方を振り返っても思うが、仕事が上手く回る上司は、必ずしも相性がよく、ポジティブな感情で仕事ができる人であるとは限らない。
むしろ、この前の係長が稀有な存在で、割と自分とコミュニケーションの取り方が近く、相手への配慮する姿勢(というかできるできないは置いておいても、何を配慮すべきと考えているかというポリシー)が似ていた。なおなつ、仕事への取組姿勢も近いという珍しい関係だった。
だから、ポジティブな感情で仕事ができていたし、分からないことがあれば素直に聞いていた。

ただ、そのような仕事ができることは少なく、考え方が合わなくていらいらしながら仕事をすることも多い。
なんでこんなに締め切りに口うるさいのか、とか。なんでこんなにコピーしに行かなければいけないのか、とか。考え方の違いから、そういうことを思うこともあった。
だけど、その当時は上司がそういったことを気にして指示してくださる方だからこそ、上手く回っていた。
必ずしも、お互いの感情がプラスであることが、仕事を上手く進めていくための必要条件ではないのだ。

ただ、問題は、この係長がそうした仕事と感情を切り離し、仕事を上手く回すために部下に対してシビアなまでの確認、報連相ができるかというところである。そうまでして、部下を育成したいと考えるかである。
個人的には、「ノー」ではないだろうか。
係長の良いところは、男性には珍しいくらいに、「察する」コミュニケーション能力が良くも悪くも高いところ。調整上手であること。相手を気遣えるところ。
だからこそ、係長が部下とやるべきは、叱ることではなくて、「言葉による指導」だと思う。

毎朝5分間、部下と打ち合わせの時間を取っているらしい。これは私が係長の部下をやっていたときに、お願いして作ってもらった制度だ。
係長は、この5分間を有効活用したら良いと思う。
私が部下をやっていた頃と変わっていなれば、どんなに忙しくても、この朝の5分間だけは情報共有するのがルールである。ここで気になる業務の進捗状況は確認するのが良いと思う。
お互いのやるべき業務をリスト化し、何が今日のゴールなのかを共有する。
係長は、対話能力が極めて高い人だから、この5分間での会話の中できちんと部下の状況を引き出して、分からないこと/分かること、できること/できないこと/挑戦させたいことの整理を行い、改めて締め切りを設定してあげるのが良いのではないかと思う。

係長は確かに叱れない人だけど、私はそれが良いと思っている。
叱らなくても、悩みながら前向きに仕事に取り組む係長を見ていれば学ぶことは多い。
だからおそらく、悩みながら、でも思いをもって部下と素直にコミュニケーションを取れば、今の部下も気がつくことがあると思う。
それは、必ずしも係長の求める「気遣い」ではないかもしれない。でも、係長とは違うベクトルの「気遣い」だからこそ、相互補完となる部分もあるはずだ。
おそらく、もっときちんと向き合えば、「仕事が遅い」のその先に、理由があると思うのだ。
そして、何よりも、その部下と同じくらい素直な上司だからこそ、伝わる言葉もあると思うのだ。