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お仕事とそうではないもの。

社会人5年目の仕事で感じたこととそうではないことのメモ代わり。

今から5か月前に書いた日記。

多分、私のこれから先2年間の指標となるもの。だからあえて今更だけど掲載しておきたい。

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異動してから早2か月。

まだまだ出来ないことだらけ。
そして今までの癖で上司と先輩に相談、質問しすぎて若干ウザがられ始めたのも自覚しつつ、でも、まあ、そこそこ頑張っていると思う。
正直、年末まで頑張ってそれでも全くできないなら、課長に次の4月に異動させて欲しいと申し出るつもりでいた。
それをやったら二度と日の目を見ることはなくなるだろうし、本社にいられなくなってしまうだろう。
でも、異動した当初は本当につらくてつらくて、そうとでも思わないとやっていけなかった。まあ、今も十分つらいけど……

何がつらいのだろう。

まず、仕事が自分で全くコントロールできないこと。
お昼ご飯はほぼ食べられないし、夕飯も食べられないことが多い。
たまに気分転換で外でランチをすると叱られたりする。そんなところは結構キツい。ただでさえストレスが溜まるというのに、それを発散する場がない。
あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーうぜええええええええええええええ!!!!!!!!!とトイレで叫びたくなることがしばしばある。

次に、職場の人間関係。忙しくて余裕がないせか、これが正直あまり良くない。
先輩たちの日々の話題は上司の悪口と後輩がいかに仕事ができないか、である。話していて全く面白くない。
みんなプライドが高いのだ。自分は自分の領分で頑張って成果を出しているという自負もあると思う。
でも、なんていうか、必要以上に厳しいなぁとは思う。あんなに悪口ばかり言っていて楽しいのだろうか。少なくとも私は面白くない。

そして何よりも、私は今、ひとつ上の先輩とペアで仕事をしている。しかしまったく仲が良くない。いや、別に仲良くする必要はないと思う。お友達になることは求めていない。
ただ、単純に円滑なコミュニケーションが取れてないと私は思う。
どうしたら先輩とうまく意思疎通を取れるのか、私は2か月経った今でも掴みかねている。

この2か月先輩を見ていて思うこと。
この人は凄く仕事ができる人だと思う。
人事部からこの部署に異動してきた、まさにエリート街道爆進中の若手である。
人事部で培った語彙や社内規範、暗黙のルールなどを知っているという強みもあるし、そもそものコミュニケーション能力も極めて高い。効率的で要領が良い。また、仕事に対して恐ろしくストイックである。
私のように、時限的なお祭り仕事ばかりしてきた、一生懸命さだけが売りという若手とは持っているものが違いすぎると思う。

ただ、なんというか……私がポンコツだからかもしれないが……私自身は一緒に仕事をしていて、やりづらいなぁと思う。
先輩は何でも出来てしまうから、多分自分でやったほうが早い。私が異動した当初は、まさにそうだったことだろう。
私が慣れない仕事にあたふたしていると、「いいいい!いいから貸して!!」と私に任せようとした仕事を結局自分で処理してしまうことが多かった。異動してきたばかりで全体の流れも分からず、一部しか見えない中で全く別なことを言われるとパニックに陥っていたし、その上繁忙期で業務量も多く、なおかつスピード感も求められる上で、今年は例年にない仕事も次々発生した。
その状況で私は10の仕事を任せられたら2は忘れる、あるいは抜けているような状態だったから、仕事のできる先輩からしたら、「この1個下はどれだけポンコツなんだろう!!俺と違いすぎる!!」とさぞかし思ったことだろう。

また、これが上司という立場なら、そんな出来ない奴が年度途中に来たとしても、育成するのが仕事だから、また違ったことと思う。
しかし、先輩はあくまで先輩であり、私とは年次が違うだけで、基本的には対等な関係である。私を育成する必要もない。
さらに、先輩自身が異動してきて1年目だった。まだ先輩だって本当なら前任者の下で勉強しながら仕事を進めている時期だったはずだ。
そこで何も分からないポンコツをペアに付けられたらたまったもんじゃないだろう。

私は要領の良い人間ではない。
コミュニケーション能力も高くないし、そもそも今の仕事に必要となるものをひとつも持っていない。いや、いなかった。
例えば、関係者たちと意思疎通を図るための語彙。本社内の人脈。担当者との信頼関係。担当者や上司の人柄を把握した上での対応。マニュアルにないちょっとした(でもそれが要だったりする)注意事項……何ひとつ持っていなかった。
そうした中で、繁忙期に周りを見て空気を読み適切な対応を取れ、というのは少なくとも私にとっては筆舌に尽くしがたいほどに難しいことだった。

でも、昔の私だったらそこでめげたりしなかったと思う。多分先輩に対して「毎朝お互いが何をやるかを話しませんか」とか提案しただろう。
ペアでほぼ同じ仕事をしているのに、お互いが何をしているのかを共有する時間がほぼないのは不健全だ。というか逆に効率が悪いというか。
別に先輩と個人的に仲良くしたいとは一切思わないけども、お互いに何をしているのかを把握しておくことは仕事を進めていく上で決して無駄ではないと思う。

ただ、今の私は先輩にその提案がしづらいのだ。
先輩は業務の主担当なので、はっきり言って私が何をやっていようがいまいがあまり興味がないと思う。自分が好き勝手進めて、面倒な部分、時間がかかる部分を私に振っておけばいいから。
私と情報共有をする必要なんて先輩にはないのだ。自分の好きにやればいいんだから。

ただ、私はそうはいかない。
私はずっと先輩の動きを観察し続けないと何をやるべきか分からない。
それはきつい。仕事が進めづらいのだ。

本来、そうした進捗管理は係長の仕事ではないかとも思うけど、今の係長は自分の武勇伝を話すばかりで、はっきり言って部下をあまり見ていない。「俺がお前たちの席に座っていた頃はなぁ……」が口癖で、その頃の俺に対して、今のできない私たちを叱る。いやいや、あのさぁ……できないならできないなりにこのメンバーでできることを考えませんか、と思うけど、どうやらそういう発想はないらしい。

結局みんな、自分ができればいいのである。
自分の領分を守ってさえいれば。

だけど、なんか、私はイマイチ納得いかない。
先輩がニッコリと笑いながら、「俺、俺の直属の係長、本当に嫌いなんだよー」とか言っているともうなんか(そういうやつに限って3分後にはその係長に猛烈にゴマ擦ってるんだよな)……なんなのこの腹黒メガネ(苛)と思ってしまう。
食えない人種しかいない。

ここで私ができること。
とりあえず、今年度いっぱいは全方位に誉め殺しである。
「ペアを組んでいる先輩はどう?」と聞かれれば、先輩の素晴らしさ、仕事がいかに出来るかを語り、どうしたらこのポンコツの自分は先輩に追いつけるのかを嘆く。
他の先輩も基本は全部アゲる姿勢を忘れてはならない。わざとらしい「俺ってマジでできないからさ〜」的な「お前それ1ミリも思ってないだろ?お前はプライドが高いから他人が万が一そんなこと言おうもんなら一生根に持つだろ?」という自己卑下に対しては、「先輩がいてくれるからこそうちの係は成り立っているんですよね!!」と全く思っていなくても、心にもなくても、感情がこもってなくても言っておく。
後輩の悪口に賛同を求められれば、「彼はこういうところが丁寧ですよねー」とか話題をすり替えておく。
係長は……正直、私、この人と相性合わないんだよなぁ、と思うけど、そこは知らん顔をしておこう。

昔、同じような気持ちになったことがある。
大学で部活をやっていたとき。
自分の同期が次々とやめていき、そして残された同期はいつも悩んでいた。私は辞めなくていいのか。私が選んだ道はこれで良かったのか。
私はその雰囲気が凄く嫌だった。
そのとき、一度だけ思ったことがある。
私は、こんな組織は嫌だ。部活をやるからには、楽しくやりたい。
私がリーダーになったら、後輩たちにはこんな気持ちは絶対に味わせたくない。

ふと、そのときのことを思い出した。

今は、まだまだポンコツで、ヒエラルキーも低い私。
でも、こんな組織は嫌だ。上司と後輩の悪口しか共通の話題がない、こんな余裕のない組織は嫌だ。
この組織は忙しい。それに食えない人ばかりだけど……せめて、笑うしかない組織にしたい。ここはカンパニーの中枢部署だ。ここが笑っていたら、絶対にカンパニー中に良い影響が与えられるに違いない。
もし2年半在籍しなければならないのなら。
私が、あと2年かけてそういう組織に変える。
他でもない私が変えていけばいいのだ。

元上司。ランチ友達。飲み友達。

係長との飲み会記録ブログ。

3月末で繁忙期が一応終わった。
約1か月半と1年で一番長い繁忙期。私にとっては異動して2回目の繁忙期、前の経験を生かしてできるようになったこともあれば、やっぱり失敗して説教を食らったものもある。精神的には少しだけ強くなったような気がする。

繁忙期が終わって一番にしたこと。
それはやっぱり係長を飲みに誘うことである(笑)焼肉とすき焼きととんかつを食べに行きましょうとメールを送った。やっぱり、係長と飲みに行くなら肉である。

久しぶりにお会いした元上司とほんとに他愛ない話で盛り上がった。中身のない話。まったく中身がないのによくこれだけ話すことがあるなと思った。4時間くらい話したけど、全然時間が足りなかった。そしてこれでもかと肉を食らった。美味しかった。
このオトーサンは元上司。でも、私にとってはある意味友達。しょうもない話、愚痴、ゲスな話。係長はいつもンフフフフと笑っているから気付かれにくいけど少々毒舌である。でも、何よりも憎めない楽しい人だと思う。
最近少しだけお子さんの話が出てくるようになったのも、なんだか嬉しかった。昔は本当に仕事の話しかしなかった。
いつもは「私は〜ですよ」と丁寧な係長が、珍しく「俺だって」と言っていて少し驚いた。ああ、この人、自分のことを俺って言うんだな、と思った。たまにタメ語で話されるときゅんとするよね、という同期をあながち笑えないかもしれない。

ひとつ、試したことがある。
一軒めを会計してまだ9時半前。酔いも回りきらない、深夜帯前。
店から一歩外に出るとそれまでどんなに盛り上がっていても、なんとなく静かになるところ、異動するときから変わらない。なんというか、ああ、もう少しこの時間に終わりが来ないように、なんとかできたらいいのに、と寂しい気持ちになる。それはわがままなのだろうかとか。いや、セクハラ?パワハラ?気を遣わせる?とか。思わず考え込む色々なこと。
それをどう言葉にしたらいいのか、果たして言葉にしていいのかすら分からない。何を話していいのか、声をかけていいものか。もどかしい感じ、お互いに手持ち無沙汰。微妙な気遣い、言葉にできないという意思表示。
うーん、どうしようか。声をかけていいものか。でも、こういうときの私の読み取りはきっと間違っていない。この上司の分かりやすさ、私はちゃんと読み取っているはず。前回思った直感は多分誤っていないはずだ。
悩みに悩んで声をかけた。「係長、まだ時間はありますか?日本酒が飲みに行きたいです!」
別に日本酒じゃなくてよかった。コーヒーでも甘いものでもチェーンの居酒屋でも、正直何でもよかった。ただ、なんとなく、私が言うなら日本酒が一番キャラが立ってて笑えるなと思った。もし読み取りが違ったとしても、断るフック、ツッコミしろになるかもなって。
「ありますよ。実はお声掛けしていいか悩んでいたんです」
その一言を聞いたとき、気を遣って言ってくれたのかもしれないけど、正直心底安堵した。そして嬉しかった。ああ、良かった。私は今でもきちんと係長の行間を読み取れていると。
係長に出会ったのは、新卒で入ったばかりの頃。そこから3年同じ部にいて、最後の1年、直属の部下で、そして異動して2年が経った。
同じ部にいて、毎日顔を合わせていても気付かなかったこともたくさんある。例えば、下戸だけど結構飲み会は好きなこととか。ゼロ次回をやりましょう、とか、もう一軒行きましょう、とか、酒飲みのウザ絡みに一番に反応して、なんだかんだで楽しそうに付き合ってくれることとか。

それからまた色んな話をした。でも他愛ないことばかりでほとんど覚えていない。
同期ガー、同期ガー、と私が繰り返すことが、薄っすらとした、でも確実に子供じみた嫉妬だということに、このオトーサンは気付いているんだろうか。良くも悪くも正直者だからな。多分気付いていないだろうし、それを言葉にする気もないが。
「課長は体育会で大変だった」
「課長には、あなたは何もしてないって茶化された」
そんな昔話をしていたものだから、流れで思わず本音が出た。
「だから思ったんですよね。この課長に、年度末までにゼッテーあなたで良かった、って言わせるって」
いつもどおり、お仕事好きですねえ、とでも笑われるかと思いきや。係長はその言葉を笑わなかった。
「あなたはそのガッツが凄いよね。今の部下も前向きだけど、あなたみたいなガッツはないんですよね」
「部下くん、前向きですよね。このあいだ12連勤したって言ってましたよ。チャラく見えますけど」
「うん、真面目だけどチャラいよね。あれは損するよねえ……」
思わず部下に話を逸らした。
正直、その言葉の方がよっぽど凄いな、と思った。元部下に対してしみじみと、茶化すでもおだてるでもなく、「あなたは凄いよね」と言える上司がどれだけいるだろう。
だから、私は伝えた。多分酔いも回っていたから、すらすら言葉が出てきた。
「……係長の方が凄いですよね。係長のように、当たり前のことを自分の手数が増えたとしても、ズルもせず、まっすぐ、一番正攻法に、相手のことを考えてできる人はいないと思う。誰だって、自分の利益を考えますよ。早く帰りたいとか休みたいとか」
「いや私もそうですけど」
「まあ、そうかもしれませんけど(笑)私は、係長みたいな係長になりたいです。まだまだ、できないことも多いし、なんで私が今の仕事なんだろうと思うこともあるけれど、でも、係長と課長と一緒に仕事をした1年間に間違いはなかったから、そうなりたい。……って上から目線ですけどね」
ああ、なんてピュアで青いのだろうと思った。でも、私が係長のことを好きなのは、面白いからでもなく(いや、もちろん面白いんだけど)、優しいからでもなく(いや、毒舌とはいえ優しいのももちろんだけど)、一番は恐らくこういう話ができるからだと思う。
何が凄いのか、何が足りないのか。
今の仕事でどうしたいのか。どうしていきたいのか。
前向きでまっすぐ。一生懸命。自分の言葉を変に茶化したり、おだてたりしないで受け止めてくれる。そして話してくれる。
だから、この元上司に会うとやる気をもらう。このまっすぐな上司が頑張ってるのなら、私ももう少し頑張ろうと思う。この笑い上戸の上司がその愛嬌で部下の心を掴んでいるのなら、私もこの組織で、周りから頼りにしてもらえる「先輩」(この4月から職層がひとつ上がったのだ)になりたいと思う。

初めて聞いたこともある。
私は係長と課長の元から異動するとき、心底異動したかったんだけど、一方で人間関係に恵まれていることは理解していたから本当に寂しかった。しかも勤務地も変わり、生活が一変したことにより、しばらく落ち着かなかったのだけど……
実はその時期、毎週のように係長とメールをしていた。最近あったこと面白かったこと、前の部の誰と会ったかということ、トラブルやハプニング。果たしてどちらが先に始めたのか。どちらもわざわざ言うまでもないどうでもいい話題を見つけては、他愛のないメールをしていた。
その頃書いた仕事関係のコラムに、こっそりと元上司たちへの感謝を込めた。一読しても分からないけど、でも、きっと読む人が読めば、これは自分たちのことなのだと気が付くように。
そして初めて知ったのは、そんな子供じみた暗号ゴッコをしていたのが、実は私だけではなかったということだ。
「……実は雑誌のコラムを書きまして。そこに感謝の気持ちをすべて書きましたよ」
「え、つまり2年前ですよね……それ今日初めて聞きましたよ!?」
「……むしろなんで今日言っちゃったんだろうね!?」
あの時期、自分が寂しいのはもちろんだけど、厚かましいことを承知で言えば、きっとこの元上司も寂しいのだろうな、と思った。
じゃなきゃこんな毎週のようにメールは続かないだろう、と。
良いコンビだった、と私が思う気持ちのひとかけらでも、係長も思っていてくれたら嬉しいと、そう思っていた。

帰りながら、次は何の飲み会はなんだろうと話した。多分来月にでもあるだろう、お帰りなさい会か、あるいはふるさとの部の焼肉会か(この部には焼肉大好きな係長がいて、みんなが異動してバラバラになった今でも年に何回か焼肉会をやっている。)もしくは係長ことが大好きな同期を囲む会か。
きっと何かしらの飲み会でお会いすることになるだろう。
だから、元上司だけど、気持ちとしたら友達だなぁと思う。
私はこの人と飲みに行くことが、大学の友達の飲みに行くのと同じように楽しい。
次は何だろうね、誰とだろうね、と笑えること。目上の人として、上司として、気を遣うけど、いやな建前はない。気取らない。その距離感をありがたいと思う。

あ、ひとつだけ係長に謝っておきたいこと。
昨年度末、仕事のカウンターパートである私の同期に異動のご挨拶にいらっしゃって。
おそらく、私にもご挨拶してくださるつもりだったのだろう。お声掛けしてくださろうとしたのに、まさか本当にご異動されるなんて思わなくて、ものっすごい冷たい反応を返してしまった。
「あ、そっすか。ってすごい反応薄かったよね……」と恨み節を説かれた。
すみませんすみません、実はその日は、ともごもご口ごたえをしたけれど、実はその時期、私は毎日のように同期から係長のノロケ話?大好きで、どんなことを言ってもらえて何が嬉しくて……というのを聞いていて、若干同期にジェラシーを感じていて、その日も同期にはわざわざ挨拶にきたことに、子供じみた嫉妬を少しだけ感じていた。
……というのは、ご本人には言わなかったここだけの話。

先輩のこと

久しぶりに先輩とメールした。

「先輩」というのは、大学時代の部活の先輩であり、そして会社の先輩でもある、とある女性の方である。気さくで、器が大きくて。要領が良くて頭の回転が速くて……とにかく大好きで、そして尊敬している、そんなお方なのである。

先輩とはいえ、本当は同い年。学生の頃はよくその点を弄られた。〇〇ちゃんは同い年だからな、よし、今日は先輩後輩ではなく、年齢で敬語を使い分けよう!とか。私らの高校卒業年次っていつだっけ。とか。
そのたびに、先輩はズルいなぁと思った。
私はこの人にはもう一生追いつけないのに、こうやって元々同じラインに立っていたことを否が応でも自覚させる。ズルい。ああ、ズルい。
私にとって先輩は、本当は友達になりたい人だった。もし高校までに出会っていたら、きっともっと仲良くなれたのに。
同期たちが「せんぱーい!大好きー!」とストレートに好意をぶつけて苦笑されるなか、私はひそかにそんな片思いをしていた。

学生の頃、先輩は数少ない部活で本音を語れる人だった。
私のやめたい、という後ろ向きな気持ちを共有して、笑ってくれる人だった。
その頃も私は部活内でも小さな組織にいて、そこでの関係が大好きだった。基本みんな後ろ向きなんだけど、なんだかんだやっちゃうよねーっていう。
改めて考えると、私は昔からそういう集まりが好きなんだろうね。少人数で一見後ろ向きに盛り上がる会(笑)今の係飲みもそうだし、部活内の担当者飲みも、思えば係飲みに通じるものがある。

私が今の会社に入ったのは、そんな先輩の影響が少なからずある。先輩が「この会社、面白いよ」と言っていたので、この人が面白いっていうならそりゃ面白いんだろうな、私のようなやる気のない人間でもやっていけるかもしれない、と思ったのが理由のひとつだった。
先輩は学生時代から要領が良く、人柄も素晴らしい人だったので、きっとこの人はバリバリ出世していくだろう、私は「先輩やっぱりすごいなぁ!」ときゃっきゃっしながら言いながらついていくんだろうなと、そう思っていた。

そんな先輩が来月から産休に入るらしい。

いつの間にか、バリバリ働くキャラは私の方だった。激務部署にきた。そして3か月後には昇進する。
一生追いつかないと思っていた先輩よりも先に昇進することになった。正直、驚いた。
同じように部活をしていて、同じように就活して、同じように会社に入り……そして、女性の人生は別れていくのだ、と思った。
先輩はもう誰かのお母さん。産休に入り、育休になり、復帰するのは早くても1年半後くらいだろう。やめちゃうことはないだろうけど。
その間、私は……私はどうなるんだろう。多分、何も変わらずバリバリ働いていると思う。
自分が結婚することも、子どもを産むことも正直まったく想像がつかない。私はいつも同世代から遅れをとっているから、もし結婚するとしても、出産を経験するにしても、周りに比べて少し遅いと思う。そして、同世代からいっぱいアドバイスとお叱りをもらいながら、時に泣きつきながら(笑)、経験するんだろうなぁ。

先輩が職場からいなくなってしまうのは、とても寂しい。「せんぱい!ちょっと!!ちゃんと言ってくださいよ!!」と何かと声をかけていた。
この5年間、なんのご縁が、職場同士がカウンターパートになることが多く、仕事でお電話する機会もままあった。仕事の交渉をするはずが気付いたらランチのお誘いになり、係長に「すみません!うまくいきませんでしたぁぁ」とご報告したら、「別の交渉はうまくいったようですが(笑)」と笑われたこともあった。
そんな大好きな先輩。いつも思いを共有してくれた先輩。もう遠い存在になってしまう。お話できなくなっちゃうかなぁ。
なんだか、とても寂しかった。
そして思う。きっと女性は誰しもそういうものかもしれない。私はこのまま仕事を選ぶ人生でいいのかしら……(笑)

懸案事項に立ち向かう笑いが欲しい

係長との飲み会記録になっているこのブログ(笑)

昨日、係長とサシで飲みに行った。半年ぶりのこと。
実は先日、お昼ご飯をご一緒する予定だったのだけど、係長に急遽打ち合わせが入ってしまい、行けなくなってしまった。
当日、連絡すらできる状況でなかったことを、優しい係長は申し訳なく思ったらしい。
「お詫びに飲みに行きましょう」、とご連絡をいただき、そこからすぐに日程調整したわけである。

お詫びのメールをいただいたとき、率直に言うと、私は少し違和感を感じていた。
お詫びなら後日ランチでいいのではないか。そこで奢るので十分なのではないか。いや、係長としてはもともと奢るつもりだったから、それではお詫びにならない、と考えられたのかもしれない。でも、とはいえ、違和感だった。
それは、係長から飲みに誘われるということそれ自体が珍しい、というか初めてのことだったから。

そんな思いを抱えていたら、飲みに行く前日、偶然職場でお会いした。
エレベーター乗り換えの待ち時間でご挨拶と世間話を二言三言。その短い時間で「懸案事項が3件もあるんですけど……どこかお祓いに良い場所はありませんかね……」と弱音を挟み込んできた係長を見て、納得した。
ああ、お詫びというのはもちろんなのだろうけど、もしかしたらその懸案事項を前向きに進めていくパワーみたいなものが欲しいのではないか。だからランチではなく飲みなのではないか。
自惚れかもしれない。でも、自分自身はそうである。係長にお会いしたい、お話したいと思うのは、大抵「聞いてくださいよー!」と泣きつきたいことがあるときだ。他でもない、このご信頼ご尊敬申し上げる上司に話を聞いて欲しい、共感して欲しい、そして何より一緒に笑い飛ばして欲しいと思うからだ。
自惚れかもしれない。でも、係長もその懸案事項を誰かに聞いて欲しいと思われたのではないか。上司部下をやっていた頃、部長や課長に無茶を言われたら笑い飛ばし、うんざりするような仕事に夜な夜な「笑うしかない」と言っていたように。そういう前向きさを懐かしまれたのではないか。
だから、よし、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、今回は私がとことん話を聞いて一緒に笑おう!笑い飛ばそう!いつも係長にはたくさん愚痴を聞いてもらっているから、今回は私が聞き役に徹しよう!そんなことを思いながら飲みに行った。

案の定、係長は飲み会でガッツリとその3件の懸案事項をお話してくださった(笑)部外者の私ですら、ご事情がよく分かった。相変わらず口が軽いというか、この人は嘘がつけないのだ。そして、見た目によらず雑談が大好きだ。
「なんですかそれただのバカじゃないですか!」「本当にヤバイやつじゃないですか!」、正直、今の私にはそんなツッコミくらいしか申し上げられない。でも、「おっしゃるとおり。ヤバいんです」と散々頷かれて次々お話されていたから、共感することくらい、少しはできただろうか。
「仕事は嫌いなはずなんですが……」といつものようにおっしゃる係長に、「仕事の方が係長のことをお好きなんだと思いますよ。モテ期ですね(笑)」と茶化してみた。「勘弁してください(笑)」と笑っていたけれど、でも、あながち間違っていないというか、言い得て妙で、多分本当に仕事の方が寄ってくるんだと思う。仕事からモテ期というのはあくまで比喩だけど、実際、係長が担当だと話がしやすいのだろう。優しいし、まずは話を聞いて受け止めてくれるし、話していてこれでもかというほど思いっきり笑ってくれる。だから、各所属での懸案事項、あるいは懸案事項になりそうな案件が煮詰まる前に係長まで上がってくるのだろう。ご本人からしたら、それで仕事が増えてしまうのだろうけど、つまり、この人は人からモテるのだ。

私は部下をやっているときにそれに気がついた。この係長は多分凄い人だ。
私は係長の3人目部下だった。部下を持って3年目のこと、おそらく初めての女性だった。係長は人に仕事を振ることに慣れておらず、目に見えて気を遣われていた。そして、何よりまだまだ若手の事務担当者のようだった。その中で関係性を作っていったからこそ私は思い入れがあるし、係長としても感じるところがあったんだろうな、というのはこれまでの会話で感じてきた。折に触れて、私は何をしてくれた、ここまでやってくれた、こういうことが助かった、嬉しかった、これは今の部下とも続けている、という話をしてくださるから。私は上司にあわせてフォローすることを考えた年だった。係長は、自分が部下を持ちリーダーシップをとることを考えた年だったと思う。
一方でその頃の私は、おそらく、この人はこの先部下からモテるだろうな、と思った。いずれ、みんなが凄さに気づくだろう。何が凄いってコミュニケーション能力と愛嬌と相手の懐に潜り込む人柄。組織ではこういう人こそ陽の目を見て欲しい。
でも、そうは言っても正直寂しかった。その頃、きっと係長は、かつて右隣で生意気を言っていた3年目の部下を忘れてしまうだろう。そう思ったら、ひどく寂しかった。
この人とのご縁はここで終わらせたくない。大事にしないといけない。この人にはまっすぐぶつかって、きっちり本音で接したいし、あるいは本音で接して欲しい。私が大切な上司だと思ったように、係長に、何か少しでもこの部下で良かったと思ってもらいたい。係長と一緒に一生懸命、前向きに仕事ができて楽しかった。感謝している。また一緒に働きたい。その気持ちを、私は係長に伝えたい。
昔、そんなことを思っていた。そこからもう2年。
一応、右隣の部下の存在は、まだ忘れられてはいないらしい。
私は同期や後輩と話すときに、今の部下のこと、担当としてやり取りしている人のこと、考えると、その人たちを差し置いて係長の話をするのは厚かましいと思っているので、そこは静かにしている。そして係長に対しては、「同期が係長にすごく感謝していましたよ!」とか「係長と話したよ、あの人すごく面白いねってわざわざ連絡きたんですよ!」とか、あるいは「同期が係長のことが好きですって伝えてくださいだそうです(笑)」とか、そういう周囲のポジティブな思いと笑いをできるだけ伝えようと思っている。
だけど、おそらく、そう言っている私がどう考えても一番この係長のことを好きなのだ。周りからよく色々と誤解されるけど、我ながら本当に大好きだなと思って苦笑してしまう。
同期から「良いなー。あの係長の部下やってたなんて羨ましい!ジェラシー感じる(笑)」と言われたけど、多分、私こそ今の部下や、もしかしたらこれから部下になるだろう女性に対してジェラシーを感じてしまうような気がしている。その好意から何か生み出したいわけではないけども、本当に嫉妬深いというか、子供じみた独占欲だなぁと思う。
だからこそ、正直、これだけはガチすぎてとてもご本人には言えたもんじゃない。周りからは、「え、そんな感じでお話しするなんて、係長さんのこと恨んでるの?」って言われているくらいがちょうどいいと思う。
こればかりはさすがの私でもちょっと笑い飛ばせない。

一通り、会計のその瞬間まで騒ぎ回ったあと。最後に無言になるところは、異動が決まった頃から変わらないなと思った。
よっぽど、「じゃあ1時間一本勝負で二次会も行きますか!」と言おうかと思ったけど、やめた。人様の家のお父さんを捕まえて、深夜帯まで飲みに連れまわすなんて良くない。
明日からいつもの日常だ、職場で笑うこともない、前向きに燃えることもない、寂しい。そんなことを思いながら、無言で駅に着いた時、私はちらりと駅の時計を見た。ああ、10時か。課長となら二次会に行く時間だ。係長の終電までは1時間半か。ここから行くのは微妙な時間だな。そんな考えを巡らせていたら、係長も腕時計をちらっと見た。
「いつものあなたにとっては、まだ早いくらいの時間かもしれませんね」
その一言をおっしゃったとき、私はどう読み取ればいいか一瞬悩んだ。そのままの意味でいいのか。単純に私を茶化したいだけなのか、それともまだ時間がありますね、と、そういう意図でおっしゃったのか。
「いやいやそれは係長でしょ!ようやく定時ですもんね。あ、終電まで時間あるじゃないですか!いやーーーしょうがないですね、これはもう一軒近場で行くしかないないですねえ」
なんとなく、それが正解かな、と思った。もうこんな遅い時間なんですね=帰らないと、という意味ではない。そうすると、その一言は、別にそこで言わなくても良い一言だったから。そういうときの係長の言葉には、だいたい言外に本心がある。だから、読み間違えていないような気がした。そこの読み取りには自信がある。
ただ、もし間違っていたら、本当にただ言葉通りの意味なのだとしたら。それを言ったら優しい係長に気を遣わせる。そこまで図々しくなれるほど、酔いは回っていなかった。
「それは係長のことじゃないですか。私はいつも定時帰りですからね!……すみません、今日は夜遅くまで本当にありがとうございました。ご馳走様でした。またやりましょう。失礼いたします」
どんなに失礼なことを言ったとしても、最後は部下としてきっちり頭を下げて、気づかないふりをした。駅に着いていなかったら、ジャブくらい打ったかもしれないけど。

のちほど、ご馳走になったことに対するお礼のメールを送った。返信には、「飲みに行けて懸案事項に立ち向かう勇気をもらいました」と書かれていた。
少なくともこちらは読み間違えていなかったのだと思う。本当に良かった。
元部下はもう話を聞いて笑うことくらいしかできない。懸案事項に一緒に立ち向かうことも、これ笑うしかないですね、って共感して笑うこともできない。
でも、今度お会いするときまでに、懸案事項が少しでも片付いていることは願ってます。

奇遇ですね

朝、憂鬱な気持ちで駅から会社に向かって歩いていたら、誰かから声をかけられた。「奇遇ですね」、と。
朝からやけにテンションの高い人だなぁ、と思って振り向いたら、それが係長だった。「びっくりしたー!」と思わずタメ口で本音が出てしまった。
その前の日まで係長とは二日連続、飲み会でお会いしていた。その翌日だったからお声かけくださったのかもしれない。
朝から、憂鬱な通勤路に不似合いなほど冗談を言い、笑いながら出勤した。
私はそれを凄いことだ、珍しいことだな、と思った。普通、朝から上司に会っても声掛けない。絶対に気付かないフリをすると思う。それはお互いに気を遣うから。何の話題を話したらいいか、相手は自分に話しかけられて気を遣っているんじゃないか、とか。それは疲れるから、わざわざ声なんてかけないのだ。
でも、係長に対してそういう気遣い、いや気疲れと言った方がいいかもしれない、そういう気持ちは全くない。そこは自然体の私で、あまり深く考えることなく言葉が出てくる。だから、全くストレスじゃない。

そして、この上司だって、私に声をかけなくても良かったわけで。あ、あんまり気遣いとかないんだろうな(良い意味で)と思った。
もちろん、私も直属の部下だった頃はもう少し気を遣っていただろうから、異動して1年半の間で少しずつ変わってきた部分なのかもしれない。

そして、さらに奇遇だったのは、歩いていたら元課長もその前を歩いていた(笑)
「あー見覚えのある後ろ姿ですね(笑)」「奇遇ですねえ(笑)」と係長と憂鬱な通勤路には不釣り合いなほど一通り盛り上がった。よほど声をかけようかと思ったけど、足早に歩く課長には追いつけなくて、結局お声かけはできなかった。
お声かけしたら喜んでくれたかな。朝から気まずいと思われたかな。課長はどちらだろうか、とふと思った。

この日のお昼、食堂で並んでいたら、また係長をお見かけした。実はこの日に限らず、私は係長をよくお見かけするのだけど、いつも声はかけないようにしていた。何となく気まずいような、わざわざ声をかけなくてもいいんじゃないかという気持ちがあった。忙しいかもしれないし、迷惑かもしれないし。
でも、朝の件があったから声をかけてもいいかもしれないと思った。お返しだ、じゃないけれど。
だから、こっそりと前の席に座った。そしてかけた言葉はもちろん、「奇遇ですね(笑)」
それに対して係長は「ああああーーー!」と一通り驚かれた後、「奇遇ですね(笑)」とお返しされた。
「いやー、よく会いますね。気が合いますね」
もしかしたら私にとっては元上司であり、そして会社では貴重な友達なのかもしれない、とふと思った。
思わずそう言ってしまったのは、そんな思いがあったからかもしれない。

今週はよく係長にお会いした。そのたび話すのは相変わらず「仕事が好きですね」から始まる中身のない応酬がほとんど。でも、それが楽しいのだ。もう何十回と何百回と話した、そのお約束のやり取りにほっとするのだ。
ああ、私、この係長のことが人として好きだなー、改めて思った1週間だった。
この会社に係長がいてくれて本当に良かった。私が係長の部下になれて良かった。
つまらなくて苦しい仕事でも、係長に会ってしょうもないことを言い合えると、少しだけ救われる。心がぽかぽかする。

とある日の飲み会で、元課長に驚かれたことがある。私と係長は、出張など長い時間をともちすることがあってもまずお互いのことを話さない。真面目な仕事の話ばかりしていたと思う。
「プライベートのこととか話しませんよね。係長がポケモンの話ししてて、あ、お子さんがいらっしゃるからだー!って思ったことはありますけど」という私の言葉にさぞかし驚かれていた。「昔、出張中にご飯事情で盛り上がったことはありますけどね」と係長は続けられたけど、でもそうなのだ。本当にそこは未だにほぼ絶対的に踏み込まない。
それがきっといいんだと思う。
何も知らないし知ろうともしない。
うすーい表面的なお付き合いだけど、話しているとなんか嬉しい。このなんか嬉しい、っていうのが良い。踏み込みすぎず浅すぎず、色気がなくて、政治的な匂いがせず、どこか子供っぽい。そこがいい。

ふたりは良いコンビだね、と言ってもらえると嬉しい。
私と係長、ほんとに良いコンビだと思う。手前味噌だけど本当に。この1週間で個人的には改めてそう思った。私たちはコミュニケーションの取り方が独特で、この関係性だから通じる言葉遣いがあることを改めて感じた。
感情豊かな言葉遊び。それが通じることへの安心感。ボケとツッコミ的な。仕事で普段使う言葉遣いとは随分違う。
一緒にいると笑って場が明るくなる、ような気もする。
でも、そこまで至ったのは、毎朝丁寧に報連相して(誰かの言葉を借りれば「マジ報連相っす」)、相手のことを思いやる仕事を一生懸命してきたからだと思う。そんな毎日があったから今がある。
係長と一緒に仕事をしていた頃のように仕事ができればほとんど問題は解決できるのになぁ。朝5分間の情報共有、お互いに今日一日で何をどこまでやるかを決めて、大変な時にはお互いサポートする。
今の仕事もそうやって進めていければいいのにな、と改めて思った。

合格の嬉しさはお礼を伝えられることだと思う

11月に入り、試験の合格発表があった。

今年の2次試験もなんとか合格。今回は冗談ではなく本当に落ちることを覚悟していたから、合格の知らせを聞いたときは思わず歓声を上げてしまった。ほんとに恥ずかしい……笑

 

試験に受かって嬉しかったことがふたつある。

 

ひとつめは、様々な方からお祝いの言葉をいただけたこと。

これまでにお世話になった方からたくさんお祝いのご連絡をいただいた。

せっかくだから、感謝の気持ちを忘れないように書き残しておきたい。

初めての部署でお世話になった部長2人、係長4人、先輩3人。

つい先日まで在籍していた部署でお世話になった部長、課長、係長3人、先輩、後輩。

同期、そして今お世話になっている方々。

 

「おめでとう」「また飲みに行こう」「お祝いしなくちゃね」という言葉をいただけることは、もちろん嬉しい。

でもそれ以上に嬉しいことは、感謝の気持ちを伝えられることだと思う。

自分にとってそれがどれだけ大切なことで、あなたがいてくれて本当に良かったと、その気持ちを伝えられることがありがたいと思った。

自分の努力が報われたのはもちろん嬉しいことだし、安堵もしたけれど、社会人の試験は自分が頑張ってどうこうなるものだけではない。社会にいる「わたし」は、学生時代のように「他人は他人、私は私」と一人割り切って生きているわけではない。周りの皆さんとのつながりがあって、組織の「わたし」がいる。私一人ではどうにもならない。

だから、組織の「わたし」を作ってくださっている周りの方にお礼をお伝えできる機会ができること、そうやってまたご縁を確認できること、それがどんなにありがたいことか。

試験に受かって良かったと一番に思ったのは、この点だった。

 

特に、これまでの5年間でお世話になった係長がみんなご連絡をくれたのは、本当に嬉しかった。

 

1年目の係長は、試験が終わってすぐお疲れ様会を企画してくれた。

しかしなんとも間が悪く人事異動があり、しかも異動先が割と忙しい部署だったから、その会に参加することができなかった。係長は、「リベンジしよう」とメールくださった。

私にとっては、初めての係長。とにかく怖かったなぁ。今でも当時言われたお叱りの言葉は忘れられない。笑

だけど、そんな係長が異動されるときは寂しかった。不安もあって、泣いてしまった。

「泣いてくれるのは嬉しいけれど、お前はそういうところが学生気分が抜けてないんだよ!」と言われたこと、今でも覚えている。でも、目は優しかった。根はあたたかく、優しい人なのだ。ちょっと口は悪いけどね。笑

 

2年目の係長は、今、近くの部署にいらっしゃる。私の合格を知ると内線で電話してくれた。いつも必ず、当時の係で一緒に働いていたお姉様の名前を出して、「○○さんが飲みに行こうって言っているからねえ。巻き込むかもしれませんがそのときはよろしくお願いします。フォッフォッフォ」と嬉しそうにお話してくださる。「ぜひ巻き込んでください。またやりましょう!」と言えることは幸せだと思う。

係長と○○さんのことを、私は部下だった当時、「係のお父さん、お母さんですから!」とよく言っていた。笑 1年目の係は係長をはじめメンバーがみんな若かったこともあって、今でも一番お父さん感、お母さん感があるかもしれない。2年目の係は、おふたりをはじめ、メンバーがみんなアットホームで、さばさばしていて大好きだ。

 

3年目の係長は、言わずもがなのあのお方。実は職場にご連絡をくださらなかった。だけど、私は確信していた。係長は私用メールで絶対にご連絡をくださると。笑 なんの自信、って自分でも思うけれど、でも係長はそういう方だから、って。1年間ペアで仕事をしていたのだ。係長と信頼関係を構築するために本気で向き合ったからこそ分かっている、という不思議な自信。笑

午前を回る頃、係長からメールをいただいた。「ご連絡が遅くなりすみません」から始まるメールには、「あなたの合格を自分のことのようにとても嬉しく思います」と書いてあった。この上司は、私にとって特別なのだ。2年目の係長が職場の父ならば、3年目の係長はお兄さん。会社人生で、自分の3歩くらい前を歩いている。尊敬しているんだけど、でも同じくらい負けたくないって思える人。係長が頑張っているんだったら私も負けていられない。多分、あちらも同じようなことを思っている、ような気がする。酔ったときにしかそんな話は口にしないけど。係長の言葉は、いつもまっすぐ、自分のモチベーションに結びつく。

 

3年目の隣の係長もメールをくださった。

実は少し意外だった。隣の係長との距離の取り方が一番難しいかもしれない。こちらからがつがつと「係長、今度飲みに行きましょう!」なんて近づきすぎると如実に困られて、かわされる。かといって、もうお声かけするのはやめようと距離を置いていると、そっと近づいてくださる。

今回はまさに後者だった。「落ち着いたら、今度こそお疲れ様会兼お祝い会をやりましょう」という言葉が、ただただ嬉しかった。なによりも、隣の係長がおっしゃってくださることが。

 

4年目の係長はついこの間までお世話になっていた方だ。係長らしい、大変丁寧なメールをくださった。一瞬悩んだ挙句、私は即座にお電話した。無事に合格したことと、感謝の気持ちを一番にお伝えしなければならないのは、試験までの期間、アドバイスをくださり、そして何よりも支えてくださった、係長をはじめとした前の部署の同僚だと思ったから。

電話に出られた係長は、「あなたが忙しいと思ったからメールにしたんですが……」と、異動内示のあとお電話したときと同じように、やはり戸惑われていた。笑(こういうところ、私と係長の相性が合わないと思うところ。笑 ハイコンテキストなコミュニケーション、人への気遣い方、そういうところがいまいち合わない。)私がいなくなってからの仕事について、色々お伺いしたいことはあったけれど、それはまた今度お会いする時にしましょう、と言って電話を切った。明らかに戸惑われていたけれど、でも、久しぶりに直接お話ができてきっと良かったと思う。きっと、電話を切ってから、「ああ、忙しいくせに電話してくるなんて(私)だな……苦笑」と戸惑われながらも、思われたことだろう。お酒が入っていた方が、我々はおそらく上手く話せるかな。笑

 

合格して嬉しかったことのふたつめは、その答案の内容にある。

実は私は今回の答案を、初めての部署で上司や先輩方から教えていただいたことを参考に作り上げた。

だからこそ、私の大好きな方々との実績を評価してもらえたことが嬉しかったし、これから皆さんにお会いする機会が会った際には、「皆さんのおかげで合格できました」、と具体的な内容を伴って言えることもありがたいと思う。

 

学生の頃は、試験に合格することは、ただただ自分のプライドが満たされるからこそ嬉しかった。

だけど、社会人になって、試験に受かる喜びはそれだけではないと思った。

もちろん、落ちたら素直にむちゃくちゃ悔しい。自分の頑張りが評価されなかったら、おそらく言葉には表せないほどに悔しく、情けなく、そして自分が許せないはずだ。それは、自分のプライドが満たされないこともそうだし、「頑張れ」と言ってくださった人たちに顔向けできないと思うから。私のために時間を使ってくださったのに、私はそれに報いることができないことを申し訳なく思うはずだ。

だからこそ、合格して御礼が言えることは嬉しかった。プライドが満たされること以上に、「ありがとう」の言葉を言えることが幸せだった。

「自分のことのように嬉しい」と言ってもらえること、だからこそ、「あなたのおかげで受かりました!」と言えること、その喜びを初めて知った。

私には、そう言える上司、同僚がこの5年間でこんなに増えたのだ。

「仕事なんて嫌い」、そう言っていた入社したばかりの私。

毎日、通勤路でお腹が痛くて仕方が無かったあの頃。あれから、4年半。

今回の試験で、社会人になって、この組織に入って結ぶことのできたご縁を改めて感じた。

「おめでとう♪」「お疲れ様会をやろう」「リベンジしましょう」「お前はやっぱり肉だな」「自分のことのように嬉しく思います」「毎日頑張っていたことが報われましたね」「嬉しいお知らせをありがとう!」「congratulation!」「これからまた忙しくなりますが今後もよろしくお願いします」……そのときそのとき、ご一緒した頃の背景を交えながら、様々なお祝いの言葉をくださった皆さん。周りの人に恵まれたことを、素直に幸せだと思った。

そして、そのひとつひとつに「ありがとうございます」と、そしてその人との思い出を踏まえた「これから」を考え、メールにしたためる。その時間の充実感。

 

これからも、そういうご縁をひとつでも増やしていきたい。

そのために、愚直に、誠実に、何よりも一生懸命仕事をしていきたい。

仕事はやっぱり好きではないけど、でも、この組織で仕事を通じて出会えた皆さんが好きだから、たまに仕事が好きなのだと誤解しそうになる。

私は、何をしていてもそれなりに楽しいし、それなりにいつも愚痴も吐く。おそらく、天職はないと思う。

でも、誰かと信頼関係を作っていく時間は他に代え難い幸せだ。この人と出会えてよかった、そういう人に一人でも出会えたら、その組織に来た意味はあると思う。

 

これから、皆さんに直接お会いして、一人ひとりこの5年間での感謝の気持ちをお伝えしていける。

そう思うと、合格できて本当に良かったと思う。


追記:

その後も色々な方からお祝いのご連絡をいただいた。

以前お世話になった課長、私のことを温かく見守ってくださったおじいちゃん。大学からの先輩。

本当にありがとうございます。

ただいま。

前の日記を更新したのは40日以上前のこと、らしい。
この1か月半の間で、私の生活は大きく変わった。

まず、とある二次試験は無事に終わった。
多方面から「頑張れ」という言葉をいただき、終わったらすぐに「お疲れさま」というねぎらいの言葉もたくさんもらった。
今回、一番お世話になった前の部長からは「試験どうだったんだよ!?報告がおせーよ!」とほぼ翌日には職場あてにお電話をいただいたばかりか、その日の夜には美味しいイタリアンをご馳走になった。
次は異動だな。よし、あいつとあいつを誘って飲み会をやろう。そこで顔を売ってやる。お前、あいつとはまだ繋がっているよな?よし、飲みに行くぞ。
いつも本当に強引だけども(笑)、何かと気にかけてくれる部長の存在はありがたく、はい、楽しみにしています!なんて言っていた。
……のだけど。

試験が終わりすぐにお会いしたのは、もちろん前の部署でお世話になった係長だった。
「今日は真面目なご相談をしに来ました!」とその週にはランチにお誘いし、異動のご相談にお伺いした。
迷惑かなあといつも思う。図々しい私にだってそれくらいの配慮や気遣いはある。
でも、一番本音のご相談をしたいのは、やっぱりこの人だった。ご経験をお伺いしたいのは、やっぱりこの元上司だった。
いつも奢って下さろうとする係長に、私は全力でお断りする(こんなの他の上司だったら絶対にやらない。ただ、係長は別。奢ってもらうと申し訳なくて誘いづらい。)。
係長たちとは、試験が終わったら飲みに行きましょう、とずっと言っていたものだから、「今度の飲み会で、山ほど奢ってもらいますから!!」と宣言したのだった。
「それは奢りますけど!それとは別!」
「いやいや、本当に山ほど奢っていただきますから!!」
「じゃあ早くメール出してくださいよ!!」
「出しますよ!!今日職場に戻ったらすぐにメールしますから!!」
係長とのテンポの良い会話は本当に楽しい。
話をしていて自分の思いを汲んでくださるところに安心するし、突っ込んで欲しいところにかっちりとハマっていく感じはただただ気持ちが良い。
そして、その日もそんな会話に満足して、職場に帰って早速飲み会のお誘いメールを出した。
……のだけど。

最初にお世話になった上司からも、試験が終わった翌日にメールをいただいた。
その年の係のみんなで飲み会をやろう、と。
今や全く違う部署、あるいは違う会社で働いている先輩たちとお会いできるのは嬉しく、楽しみですね、なんて言っていた。
……のだけど。

それらは、全て叶わぬこととなってしまった。

それからまもなく、私に辞令が出た。
定期異動の時期ではなかった。
年度途中の、例年だったらあり得ないような時期に。


それも、まさかの、本社に戻ってこいという辞令だった。


まさに、青天の霹靂とはこのこと。
私はその内示を自宅で知った。
間が悪いことに、私は本人内示日にお休みをいただいていて、のんきに寝ていたのだ。
明らかに職場と思われる番号からかかってきた電話に起こされ、覚醒しないままに出てみたら、そこで名乗ったのはまさかの直属の課長。
試験が終わってからそんなに時間も経っていなかったから、何か試験でおかしなことでも書いたのか、やらかしてしまったのか。
そんなことを考え、内心ヒヤヒヤしていたのだけど、それらは、大いなる勘違い。
その電話が、まさしく異動の本人内示だった。

「来週から、本社に異動になりました。
部署は〇〇というところです。
社内に人事異動表が発表になるのは、明日の予定です。」

頭が真っ白になった。
来週というと、その日から3日しかなかった。

「もう……時間もないですし……私、今日は出勤した方が良いんじゃないでしょうか……」
「まだ、あなたが異動することを、係の皆さんも知りません。明日の朝、私からお話しする予定です。
だから、今日はゆっくり休んで、明日来てください。」

つまり、有給のはずなのに、突然来られても逆に困る。
そういうことだった。

電話が切れてから、すっかり放心状態になってしまった。
その月の終わりには、大きなイベントが予定されていて、私はその当時、それに向けて準備を進めていた。
去年よりも良いものにしようと、係長や後輩と日々議論し、新しいアイディアを形にしていた。
翌週には、関係者の皆さんとの打合せを予定していた。
その大きなイベントを効果的に実施するために、どんな伏線を張っておくかを話し合う打合せだった。
来週には、来月には、来年には……

頭の中に浮かんでくる、この先のスケジュール。
あれをしなくちゃ、これをしなくちゃと無意識に思い浮かぶ、明日からのこと。
でも、その瞬間、予定されていたその部署でのスケジュールが全て消えて無くなった。
私は、その来週、来月、来年を迎えることができなくなってしまった。

ああ、もう、私には全部、関係なくなってしまったんだ。
あんなに楽しみにしていたのに。準備していたのに。
その日を迎えるときには、私はもう担当者ではないのだ。

あの瞬間の戸惑いは、言葉にできない。

いてもたってもいられず、すぐに係長に電話をかけた。
いくら課長が来なくていいよ、とおっしゃっていても、実務的にはそうもいかない。
引き継ぎもある。そもそも異動するなんて思っていなかった。これからの3日間で準備し、引き継いで異動しなければならない。
そのためには、一日も早く係長と今後のことを話し合う必要がある。

「課長から話は聞きました。私、今日、午後から出勤しようと思うんですが、」

電話をしたら、係長は怒りの混じった声でこうおっしゃった。

「あなたのことだから、課長にも出勤すると言うと思いましたし、私にも電話をかけてくると思いましたが……課長からも言われたと思いますが、社内への発表は明日なんです。今日は何もできないんです。来なくていい。来なくていいから」

何も怒らなくても……
そのときはそう思った。
けれど、おそらく、係長も相当動揺していたのだろうということを、その次の日にお会いして、なんとなく、感じたのだった。

翌日から異動するまでの3日間、係長とは色々な話をした。

出勤してすぐに、残りの日々をどうするのか、誰に何を引き継ぐのかを話し合った。

私の異動がいつ決まったのか、いつ課長と係長は知ったのか。心の整理が付かなくて聞いてみた。
前月にもやはり例年ではあり得ない時期に、若手が何人か異動していた。
人事系の仕事をしていた私は、当然その異動表を見ていたし、それを見て今、本社がいかにバタついているのかを薄々感じていた。
実はそのときにも、私の組織から若手を異動させる話が出ていたらしく、私と後輩が候補に上がっていたらしい。
結局、そのときは対象にならなくて、課長と係長は良かったと胸を撫で下ろしていたそうだ。
そうしたら、今回、何の予兆もなく、突然異動が決まったということだった。

やはり今、本社はものすごくバタバタしているらしい。
人事は本社内の各部署から異動させられる若手を募ったが、人が出せないという話だったそうだ。
そこで、ついに出向先のブランチという本社からは随分遠い私の組織に白羽の矢が立った。
特に人員を多く付けていた私の係に目が止まり、後輩の2人が候補になり、最終的に私が選ばれた、そういうことだったようだ。

係長は、私の異動をひどく寂しがってくれた。

「こんなにガッツリと一緒に仕事をした部下は久しぶりでしたから……ショックでしたね」
と、翌朝一番にはおっしゃってくれただけでなく、その後、係内にオープンになり、同僚たちが何気なく「寂しいね」と声をかけてくれるごとに、「寂しいですね」と呟いていた。
いよいよ、異動表が全社的に発表になった瞬間には、「これが夢なら良かったのに、本当になってしまいましたね……」と、当の本人よりも寂しがってくれたかもしれない。

私は、ずっと本社に戻りたかった。

出向先の、しかもブランチという、本社から遠い世界は、間違いなく我が社の最後の天国だ。
ほとんどがルーティンの仕事で、周りがみんな同じ仕事を分担しているから、必ず誰かに聞けば答えが出る。そうでなくとも、リーダーシップの強い係長だった。自分で判断することはほとんど必要なかった。
そこで新しい事業の立ち上げを経験させてもらえたことは、感謝しかない。
どうしたらもっと良くなるかを考えることを求められる。そのために現場をたくさん見に行けて、色んな人に話を聞きに行ける。
報連相をしっかりと求められる。進捗管理してもらえる。
こんなに気が楽で楽しい仕事は、おそらく二度とないだろう。

でも、私は本社に戻りたかった。
本社で同期が新しい仕事に携わり、経験を積んでいる中で、私は本社で働いた3年間の貯金で仕事をしていると、ずっとそう思っていた。
もちろん、ブランチに来たからこそ知れたこと、学んだことはたくさんある。
本社にずっといたらきっと勘違いしていたこともあったと思う。エリート意識ばかり肥大していたかもしれない。
それでも、この1年半、同期たちから置いてきぼりを食らっているような、そんな気がしていた。

人事はそんな私のことを、ブランチに出しておきながらも見ているというのは薄々感じていた。
私のポストに対して、人事から依頼される仕事がちょこちょこあったこと、そして昨年度の人事評価が最高位だったこと。
出向先の、しかもブランチの勤務で最高位なんてまずあり得ない。
それは私の仕事の進め方が特別に優秀だったわけではなく、単純に評価を作文しやすい仕事内容だっただけなのだ。
新しい事業を滞りなく進めたから、なんて、評価理由の作文にはもってこいだろう。
私という人物に対する評価が良かったわけではない。このポストが最初から評価点の高いポストだったという、ただそれだけだ。誰がここに立っても、恐らく同じ評価になったことだろう。
お前をそういうポストに付けたんだぞ、お前は今そういう立場にいるんだぞ、そういうレールに乗せているんだぞ、という視線はなんとなく感じていた。
私という人間の本質は変わらないのに、それは3年目までのときと全く異なるものだった。

この部署に異動する前。それこそ、初めて異動の内示を受けたあと。
当時、お世話になった課長が不貞腐れていた私を呼び出し、話してくれたことがあった。

「最初の勤務が本社だから次は人事ローテーションで出先に出す、そういうことは確かにある。
でも、あなたは、その出先でやるべきことがあって異動するんだから。特命みたいなものなんだから。
次は一緒に残ってくれる係長はいないかもしれない。大変なこともあるかもしれない。
でも、見ている人は見ててくれているから。
だから、頑張って。」
「そしたら……その仕事が落ち着いたら、私はまた戻ってこられますか。
1年できちんと作り上げられたら、もう大丈夫だ、そう思ってもらえたら、また本社に戻れますか。」

当時の青臭かった私は、確かそんなことを聞いた気がする。
その問いに、課長が何て答えてくださったのかは、もう覚えていない。
そもそも、私はこれが本当の話だとは思わなかった。課長の優しい嘘、いや、優しい建前だとばかり思っていた。
いや、課長としては、建前のつもりだったのかもしれない(笑)
そうしたら、まさかほんとに、新規事業の立ち上げが落ち着いて、昨年度の実績を部長と課長に報告したその次の週に本社に戻れと言われるとは。夢にも思っていなかった。

なんとも、おめでたい考え方をすれば。

初めての部署。3年目の頃。私の人事評価はそれなりに良かったと聞いている。
それを知った人事は、3年目のあるとき、果たしてその評価に間違いがないのかを直接確かめるために、私を含めた同期数人をとあるイベントに呼び出した。
そこで、人事からどんな評価があったのかは知らないが、少なくとも新規事業を任せられるという判断はしてもらえたのだろう。
当時の部長、課長の話によると、「彼女の次は過酷ですよ」と言われて、異動が決まった。部長は激務部署に異動だと思っていたらしい。しかし実際には、出向先の、さらにブランチで、その年から始まる事業を立ち上げる、そういう担当だった。
通常、本人内示で知らされるのは係名までだが、私の初めての異動内示は、その時点で仕事内容まで決まっていた。新規事業を担当してもらう、まで直属の課長から言われたものだ。
その後、新規事業の1年目は無事に終了し、2年目は随分仕事も落ち着いた。ほぼ定時帰りとなりつつも、1年目の分析をしながら、さらに良いものにしようと進めてきていた。
そこへ、本社へ戻る話が来た。
これまで、傍流部署で、新しいこと、突発的なこと、時限的な事業ばかり任されてきた私。
初めての本流部署への異動、歴史ある正統派な仕事の担当になった。
間違いなく、誰の目から見ても、紛れもない栄転だった。
ここまでの間、私が何をしたわけでもない。初めの部署の頃から変わらずポンコツだ。人間としての本質は変わらない。
ただ、新規事業を任せてもらえる、というのが何かのレールだったのだ、と思う。作文しやすい、というか、この人は優秀なのだというロジックが立てやすい、というか。
現実は必ずしも作文通りではないけれど、多分、人事における「私(というかこのポストにいる私)」という存在が作文しやすい人間になっていたのだろう。
組織のいうのは不思議だと思う。自分は何も変わらないのに。

ただ、これは相当おめでたい考え方をした場合である。
実際には、そんな優秀な社畜ではないことは、自分が一番よく分かっている。

確かに今の部署は紛れもなく本流。
私だってずっとエリートがいく組織だと思っていた。普通ならまず私を異動はさせない。
私自身、自分のことはそれなりに分かっているつもりだが、私は組織でトップを走るような人間ではない。そんな器はない。
同期で1〜5位には間違いなく入らない。10位までに入っているかも怪しい。
円滑なコミュニケーション能力、頭の回転の早さ、機転、といった指標で見れば20位くらいだろうか。そこにパワフルさと仕事への責任感の強さが強いという評価が少々高い、といったところだろう。
だからこそ、時限的な面倒くさい仕事には付けるけど、正統派な本流にはなかなか行かなかった。傍流の都合の良いお祭りオンナ、というのが私の自己評価である。
ただ、そんな私ですら異動させられるということは、それだけ人が足りないということなのだ。
本来、そのポストに付けるべき人が他の部署に取られてしまっているから、繰り上げで呼ばれたにすぎない。
そこを勘違いすると痛い目に合うと思う。

脈絡もなく長くなってしまった。

以上がこの40日余りの間に起きた出来事である。

異動にあたっては、引っ張られたんだね、と半ば嫉妬のような声も聞かれたが、正直、そんなものではないことは、自分が一番分かっている。
こんな中途半端な時期にただ単に人が出せたのが、私のいた組織だけだったという話だ。
さらに言えば、その中でも私がいた係に人が多かっただけで、後輩と私のどちらが異動に適した時期だったかという、ただそれだけの話にすぎない。
仮に評価されたのだとしたら、それは私自身ではなく、私のポストだ。
私は大した人間ではない。コミュニケーション能力は低いし、愛嬌があるわけでもない。ゆえに、結構ハレーションも起こす。

でも、異動してきてしまったものは、もう仕方がない。
向いていないと思っても、周りから嫉妬されても、しばらくは組織全体に迷惑をかけたとしても……なんとかモノにしていかないといけない。
なぜ、私が悩まないといけないのだろう、と思うときがある。
こんな時期に異動させられて、これまで一度も経験したことのない分野の仕事で、それも結構な繁忙期の中で……仕事の意味すら分からないまま、いきなり出来るわけがない。なぜできないことにこんなに悩まなければいけないのか。でも、相手方はそんなこと知ったことではないだろう。結局、私が努力しなければ、周りに迷惑をかけてしまう。正直、つらい。多分、人事が思っている以上に、年度途中に一人異動するのはつらい。自分の中の連続性が突然途絶える。私の本質は変わらないけど、組織人としての「私」は変化させなければならない。
確かに前の私の仕事は楽だし、本社の人たちからしたら大したこともないと思うだろう。
でも、そんな仕事でもこの先の予定はあったし、目標もあったから、それが一瞬にして全て無かったことにされてしまうのは堪える。成果すら報告の機会は与えられず、ちょうど年度途中の自己評価の時期とかぶっただけに、真っ白な成果シートには新しい目標と今日までの1週間の成果を記入せよ、と機械的に求められる。そんなの、書けるわけがない。
じゃあ今日からはこれを頑張れ、これを習得せよ、ちなみにあなた以外の周りの人たちは少なくとも半年はその仕事をしているから、分からないのはあなただけだよ。
そんなことを言われても、とても受け止めきれない。

そうは言っても、でも頑張らなければならないのは分かっているんだけども。